親子3人旅暮らし―。入場無料で、大道芸さながらの「投げ銭」を取り入れた「野外劇団楽市楽座」が、臨場感あふれる芝居で各地に明るい笑いを届けている。座長の長山現さん(54)と妻の佐野キリコさん(46)、長女萌さん(13)の全国を巡る旅は、4年目を迎えている。
演目は自作の喜劇で、原発問題や格差社会などの風刺も織り込む。3人は、トラックとワゴン車に舞台装置や楽屋兼住居となるテント、家財道具を積み込み移動する。各地の公園や神社、寺などを会場に、3人で舞台を設営、解体する。
「舞台から屋根と壁をなくしたら気持ち良かった」と話す長山さんは、開放空間での野外劇にこだわる。直径約3メートルの円形舞台は、水に浮かんでゆっくり回転する独自の構造。劇中の音楽は、ギターや三味線、バイオリン、鳴り物など3人の生演奏で、長山さんの巧みなギターに乗せた軽快な歌も魅力の一つだ。
投げ銭もユニーク。入場料は取らず誰でも立ち寄り自由で、観客にはお金を折り紙にくるみ、面白いと思った場面で投げ入れてもらう。うまくいけば舞台はさらに盛り上がる。「チケット制よりもうかるかも。面白い作品を作らないと」と脚本・演出・音楽を担当する長山さんは笑う。
ガソリン価格の高騰などで旅は楽ではないが、北海道のある町では食品など大量の差し入れが届き、一部を辞退したことも。佐野さんは「厳しくとも『足るを知る』。私たちの原点を再確認できた」と振り返る。
中学1年の萌さんは地元大阪に戻れば学校に通う。この1年で身長が伸び、各地のファンを驚かせた。アンデルセンの名作を下敷きに4月に始まった「はだかの王様」公演は、今月から東京、名古屋、大阪を経て、四国、九州を順次回り、11月に沖縄へ入る。
詳細は公式ホームページ(http://yagai―rakuichi.main.jp)。
[時事通信社]