王貞治、長嶋茂雄、落合博満……名打者であればあるほど、審判の判定には文句をつけない。なにかを言っても、ストライクボールは変わらないし、審判に嫌な印象を与えてしまうだけで、良いことは何もないことを熟知しているからだ。
だが、審判がコールする前に、みずからジャッジをしてしまう選手がいる。
DeNAの荒波翔(27)だ。外角に際どいボールが投じられると、右手で払いのけるような仕草をし、勝手に『ボール』と判定してしまうのだ。
9月14日の中日戦(ナゴヤドーム)でも、荒波は審判よりも先に判定をしてしまった。1回、1死ランナーなしの打席に入った2番・荒波は、1ストライクからの2球目、先発・カブレラの外角へのボールを見逃す。同時に、右手で “ボール”と払いのけた。
しかし、審判の右手は上がった。追い込まれた荒波は、3球目を空振りし、あっけなく三振に終わる。
この日に限らず、荒波は“右手ボール”を何度となく行っている。
ボールと判定してもらいたい気持ちは重々承知だ。だが、そのような仕草をすると、良い印象を与えず、なかには「荒波が右手でボールのポーズをしたらストライク」と考えている審判がいてもおかしくない。
最近、チャンスに打てず、不調を託っている荒波のどこかに、「ボールであってほしい」という消極的な精神状態があると思われても仕方ない。
過去の名選手は、審判を味方につけた。
世界のホームラン王・王貞治の打席では、審判に「選球眼の良い王が見送るならボールだろう」という認識があったと言われ、“王ボール”と名付けられたこともあった。
落合博満は中日監督時代、審判に文句を言わないことを徹底させ、判定に首を捻って帰って来たり、ベンチで「あれはボールだよな」などと言っていたりする選手に対し、「なだめ合ってどうする。それなら追い込まれる前に打て。審判の判定は変わらない」と突き放した。
荒波は走攻守三拍子揃った打者であり、中畑清監督も期待するDeNAのスター候補。審判の判定が下る前にみずから“右手ボール”を宣告するクセを直せば、さらに輝きを増すはずだ。
(落合知)
※写真は『横浜DeNAベイスターズ』公式サイトより
【関連情報】
4 荒波 翔 – 選手名鑑 | 横浜DeNAベイスターズ
http://www.baystars.co.jp/team/player/detail/4.php