北島三郎が紅白歌合戦のトリをクリス・ハートに取られたら、あなたはどう思うだろうか。
2013年のJリーグも残り一節。横浜Fマリノスが逃げ切って優勝するのか。それとも、サンフレッチェ広島が逆転で連覇を果たすのか。横浜が川崎フロンターレと、広島が鹿島アントラーズと対戦する12月7日の土曜に全てが決まる。
その一方で、J2同士のJ1昇格プレーオフも盛り上がっている。
1日の準決勝では徳島ヴォルティスと京都サンガF.C.が勝ち上がり、8日に国立競技場で決勝戦が行なわれる。さらには、J2・JFL入れ替え戦のカマタマーレ讃岐(JFL)対ガイナーレ鳥取戦(J2)も、同日に開催される。
熱気が高まっているが、この日程の順番には疑問が残る。本来であれば、J2のプレーオフが先で、J1の最終節を後に持ってくるべきだろう。
締め括りであるトリには、日本サッカーリーグの最高峰であるJ1の試合を持ってくるべきなのである。
日本人には、「トリ(最後に出演する人)=主役」という意識が根付いている。もともと、トリという言葉が日本文化である寄席に由来することからも、「トリ」に対する日本人の想いは特別だろう。
誤解を恐れずシンプルに言えば、「トリ=いちばんすごい人」なのだ。もしあなたが紅白歌合戦のプロデューサーだとしたら、トリに松本伊代を持ってくるだろうか。要するに、トリには「格」が必要なのである。
今年のJリーグはJ1が土曜日に、J2が日曜日に開催された。その流れを汲むため、J1の最終節よりもJ2同士のJ1昇格プレーオフやJ2・JFL入れ替え戦が先にくるという事態が生まれたのだろう。
だが、そのような日程を組めば、最初からこうなると想定できたはずだし、Jリーグが「トリ」というものに対していかに意識が低いかが分かる。
優勝争いよりも、J1昇格(J1残留、J2降格)を懸けた争いのほうが盛り上がることは以前から指摘されていた。徳島と京都は、勝てばJ1、負ければJ2という「天国と地獄」に分けられる。
J1とJ2では年俸にかなりの開きが出る。年俸数百万円がスタンダードのJ2選手にとっては、まさに生死を懸けた戦いなのだ。
となれば、必死さもおのずと変わってくるし、J1への昇格ゲームが盛り上がるのは自明だろう。
しかし、「トリ」の重要性を認識していれば、J2の試合がJ1の試合より後にくることはありえないのだ。この行為は、みずからJ1の優勝争いよりも、J2同士のプレーオフの方が面白いと喧伝しているようなものなのだ。
Jリーグは2ステージ制とポストシーズンについて話し合いを進めている。
しかし、まずは細かいようで重要な「日程の順番」を配慮することから始めた方が良い。
日本人の潜在意識に目を向けない限り、Jリーグは違和感を持たれたままだろう。
(落合知)
※写真はJリーグ公式サイトより
【関連情報】
Jリーグ公式サイト
http://www.j-league.or.jp/
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