今冬最強作『ゼロ・グラビティ』を放った映画監督のアルフォンソ・キュアロン氏は、名実ともに現代最高の名匠だ。その作風は独創的で、他の追随を許さぬ完成度を誇る。(素人は)さぞかしワンマンな仕事スタイルと想像するが、トップクリエイターの態度は意外だった。
実はキュアロン監督、『ゼロ・グラビティ』では実子のホナス・キュアロンに脚本を委ね、初めての親子コラボレーションを果たした。巨匠は「息子には才能があると思う」とホナスとの共闘を回想した上で、息子の才能に刺激を受けたことを明かす。
「ホナスは――エンターテインメント性を追求しながら、それと同時ギークな部分も両方、共存していいという発想だった。それに、純粋に楽しければいい、という態度で仕事を受け止めてもいたな。時に、そういう“偏見を持っていない人”と仕事をすることは、とても新鮮だったよね(笑)」
『ゼロ・グラビティ』を観れば分かると思うが、本作はひとりの映画作家が強靭な意志を貫いた結果の産物だ。孤独な宇宙空間を舞台に、宇宙飛行士が生還を願って奮闘するというシンプルなストーリー。
エイリアンやヒーローは登場せず、セリフや音楽が少ない。サンドラ・ブロックやジョージ・クルーニーの顔もよく見えず、キュアロン監督が思い描いたイメージを存分に投影しているため、言ってみれば独善的な仕上がりだ。ところが、巨匠は、“若い巨匠たち”に学べと、意外なコトを口にする。
「仕事をする上で、巨匠たちを手本にすることは大切だが、年を重ねると“若い巨匠たち”を参考にするということも必要になってくるわけ。彼らは若いからこそ恐れ知らずで、先入観がまるでないからね(笑)」
だからこそ、『ゼロ・グラビティ』のような大傑作が誕生したことは、言うまでもない。一般人の我々も、後進の意見などに耳を傾ける余裕を持てれば、成功を手にできるかも、だ。
映画『ゼロ・グラビティ』は、全国大ヒット公開中
【関連情報】
映画『ゼロ・グラビティ』オフィシャルサイト
http://wwws.warnerbros.co.jp/gravity/
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