こんにちは。恋愛ライターの石田です。セックス依存症の男の孤独と葛藤を赤裸々に描いた『SHAME-シェイム-』のスティーヴ・マックィーン監督の最新作『それでも夜は明ける』が3月7日公開になります。
自由の権利を得ていた黒人音楽家が、12年間も奴隷として過ごさなければならなかった過酷な人生の物語。権利も自由も奪われ、奴隷になるという経験をしたひとりの男性が絶望の中でなぜ希望を持ち続けることができたのか。そこには人間の尊厳、真実の姿が描かれています。
物語は1841年、アメリカのニューヨーク州で家族と幸せに暮らしていたバイオリニストのソロモン(キウェテル・イジョフォー)が、ある日突然誘拐されて、奴隷として見知らぬ遠い土地へ売られるという衝撃的な場面から始まります。
仕事を紹介されて興行主と祝杯をあげた……までは良かったけれど、目が覚めると手足を重い鎖でつながれていたソロモン。「おまえは南部から逃げてきた奴隷だ」と自分の名前を名乗ることも許されず、ムチで激しく打たれてニューオリンズの奴隷市場へ。
大農園主のフォード(ベネディクト・カンバーバッチ)は優しく、紳士的な主人だったとはいえ、奴隷に人権はなく農園主にとって彼らは財産の一部でしかありません。有能で賢いソロモンは、仕事をしているうちに大工のティビッツ(ポール・ダノ)に目をつけられてしまいます。トラブルを避けるために、フォードは借金返済を兼ねて綿花畑を所有するエップス(マイケル・ファスベンダー)にソロモンを売るのですが……。
狂信的で選民思想を持つエップスのもと、ひどい差別と偏見、過酷な環境に投げ込まれても、ソロモンは家族との再会をあきらめず、強い心で必死に耐えます。
一方、冷淡で悪評高いエップスは、暴力で奴隷たちを支配して、若いパッツィー(ルピタ・ニョンゴ)にご執心。パッツィーに対して特別な想いがあるのは火を見るより明らかでエップス夫人にさえ見抜かれているのに認めないのは本人だけ。矛盾したパッツィーへの愛を理解できないまま、エップスは彼女にのめり込んでいくのです。
奴隷は自分とは違う人間で、自分以外はすべて敵だと考え、世界は自分を敵視しているから暴力で優位に立って、必死で心の均衡を保とうとするエップスの心の闇に深さ。マイケル・ファスベンダー演じるエップスのパッツィーに対する歪んだ愛情には、哀しみさえ伴います。
絶望のふちに沈むソロモンにあって、エップスになかったもの。それは自尊心。恋愛の駆け引きでも自分が優位に立つために相手を傷つけ、自分の心にも傷を負っていることに気づかない人がいます。利己的な人は他人を傷つけたことを正当化するけれど、時代や人種に関係なく、大切なのは勇気を持つこと。つらい状況でも自分の大切なものを見失わない強い精神だと、この作品は教えてくれます。
■作品情報『それでも夜は明ける』
監督:スティーヴ・マックィーン
脚本:ジョン・リドリー
出演:キウェテル・イジョフォー マイケル・ファスベンダー ベネディクト・カンバーバッチ ポール・ダノ ポール・ジアマッティ ルピタ・ニョンゴ サラ・ポールソン ブラッド・ピット アルフレ・ウッダード
原題:12YEARS A SLAVE
配給:ギャガ
公式サイト:http://yo-akeru.gaga.ne.jp/
3月7日(金)ロードショー
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