プロ野球では、3ボール0ストライクになると、打者が見逃すという慣習がある。
そのためか、3ボールから投手は簡単にストライクを取れ、結果的に打ち取るケースは少なくない。
9月12日、巨人対DeNA戦(東京ドーム)でも、似たようなシーンが見られた。9回、3対1とリードした巨人は抑えの西村健太郎をマウンドに送る。
5連投の西村は肩に張りがあるのか、この回の先頭打者である梶谷隆幸に明らかなボール球を続け、1ストライクも取れずに、四球を与える。
続く、荒波翔にもストライクが入らず、2ボール。これで6球連続ボール。
24試合連続無失点中の西村を捉えるチャンスが訪れた。しかし、次のド真ん中のストライクを荒波は悠然と見送った。待てのサインが出たのかどうかは、DeNAの首脳陣と選手にしか分からない。
だが、ここはストライクゾーンであれば、遮二無二振っていく必要があった。
1つストライクを取ったことで、西村は落ち着きを取り戻した。結局、荒波は追い込まれ、三振に終わってしまう。
立ち直った西村は、次打者・後藤武敏を三ゴロ併殺打に打ち取り、ゲームセット。
本調子でない西村が6球連続ボールから投じたド真ん中のストレートを、荒波が簡単に見逃したことで、勝負あったのだ。
確かに、そのボールを打ち損じ、凡打になれば、周りから批判を浴びるだろう。だが、それは結果論である。
あの甘い球は、西村の投球の中で、この日一番のチャンスボールだった。
もちろん、ボール球であれば見逃すべきであるが、ストライクゾーンに来たボールは振りに行くべきなのである。
このシーンに限らず、日本人選手はボール球が続くと、見逃す傾向が強い。しかし、3ボールや2ボールから安易にストライクを取りにくる球は、甘いことが多い。
「ファーストストライクを積極的に振れ」という一方で、ボールが先行すると「待て」のサインが当たり前のように出るし、打者が自重してしまうこともある。
その背景には、「3ボール0ストライクから凡打したら、何を言われるか分からない」という心理が透けて見えてしまう。だが、繰り返しになるが、そのカウントはいちばん甘い球がくるケースなのだ。ストライクゾーンに来た球であれば積極的に振りに行くべきである。
ただでさえ、荒波は前日、前々日とチャンスで凡退し、この日はスタメンを外されていた。消極的になっている心理状態と考えられるからこそ、ここは割り切ってファーストストライクを振っていくべきだった。
DeNAは巨人に同一カード3連敗を喫し、3位・広島とのゲーム差が5に開き、クライマックスシリーズ進出が遠のいた。
(落合知)
※写真は『横浜DeNAベイスターズ』公式サイトより
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