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田中将大と江川卓はどちらが凄い? 時代の先端を行き過ぎた『100球肩』

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田中将大と江川卓はどちらが凄い? 時代の先端を行き過ぎた『100球肩』

「そろそろ、100球ですからね。もう交代でしょう」

テレビでプロ野球中継を観ていると、解説者が毎試合のように口にするセリフである。

一体、いつから先発投手は恥を忍ばずにマウンドを降りることになったのか。10年毎に、リーグ別の完投数を振り返ると、以下のような数字が出る。

完投率比較

この表を参考に、大雑把ではあるが『先発』と『完投』について考えてみよう。


三昔前は「先発は完投すべきである」
二昔前は「先発はできる限り完投すべきである」
一昔前は「エースは完投すべきである」
現在は 「エースはできる限り完投すべきである」

と徐々に、先発投手が担うべき責任回数が減っていると言える。

10年前は、2番手、3番手の先発はリリーフの力を借りて当然という風潮はあったが、「エースは完投すべきである」という空気があり、上原浩治(巨人)や松坂大輔(西武)は投げれば完投することを求められた。

だが、今となっては、エースでさえも、完投することが必ずしも求められていないといえよう。’12年シーズンの最多完投は、セ・リーグが三浦大輔(DeNA)の5、パ・リーグが田中将大(楽天)の7である。

現代野球に対して、あの男はどのような見解を示しているのだろうか。

今から四半世紀ほど前、5,6回になると急に打たれ出し、「100球肩」と揶揄されたエース。“昭和の怪物”と呼ばれた江川卓(巨人)である。

先発は完投することが求められた時代、右肩を痛め、晩年に差し掛かっていた江川は「わずか100球しか持たないダメ先発投手」の烙印を押されていた。

6回3失点で防げば、クオリティースタートと一定の評価を与えられる現代では、考えられない話である。

もし今、江川が現役投手であれば、いったい何勝できたのだろうか。常に9回投げ切ることを考え、下位打者には下位打者なりの投球をしていたため、突然『一発病』が顔を出し、『手抜き』などと批判されていた。252先発110完投である江川の完投率は、44%にまで上る。

現代のように、中継ぎ・抑えの役割が確立し、「6,7回投げとけばいい」と割り切って考えることができれば、江川はきっと20勝をもっと達成できただろうし、完投数が減れば、それだけ肩への負担も軽減され、現役寿命ももっと伸びたはずだ。200勝にも届いていたかもしれない。

実際の江川は、現役生活わずか9年、通算135勝でプロ野球生活に幕を下ろしている。

だが、登板するたびに6回3失点でマウンドを降り、200勝を挙げたところで、果たして江川卓は、記憶に残る投手になっただろうか。


・バース(阪神)に後楽園の場外に運ばれた7試合連続本塁打
・引退を決意させた小早川(広島)へ投じた渾身のストレート

打たれた姿がいまだに記憶に残り、あれほど絵になる投手はそうはいない。

『100球肩』と揶揄されながらも、一人で投げ抜くプライドを持ち続けたからこそ、いくら罵声を浴びせても、人々は江川卓をスポットライトから引きずり降ろそうとはしなかった。

現代プロ野球において、江川卓よりも速いストレートを放り、江川卓よりも曲がる変化球を操る投手は数多いる。

しかし、『抑えても打たれても、1人で責任を負う潔さ』という『完投の美学』を持つ投手が現れない限り、記憶の面で江川を超えることはできない。

みんなで分担する“ワークシェアリング継投”よりも、一人で投げ切る完投に魅力を感じてしまうファンは少なくないはずだ。

※写真は松井優史『真実の一球―怪物・江川卓はなぜ史上最高と呼ばれるのか』(竹書房)より

【関連情報】
松井優史『真実の一球―怪物・江川卓はなぜ史上最高と呼ばれるのか』(竹書房)
http://www.takeshobo.co.jp/book_d/shohin/5522201

夕刊ガジェット通信


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